ISO9000シリーズ
認証取得企業からの提言
copyright (株)プラスワン総研 鈴木 勝
1. 認証取得の現状
1.1 認証取得の目的
ISO9000シリーズの認証活動も一般的になってきた感がある。現在、日本での認証取得数(事業所単位に認証している企業もある)は、4000件を越える。(正確な数字ではない)
認証取得をする理由としては、まず、海外における自社製品の優位性、販売活動の規制が挙げられるかと思うが、実際の認証取得企業では、もはや、海外を意識したものではなく、自社製品の品質向上が一番の目的となっている。海外の取引と全くない企業も最近では、積極的に認証取得を行っている。
1.2 品質システムの是非
ISO9000シリーズを取得するためには、品質システムを構築し、運営することになるが、この品質システムの実行が、自社の製品の改善に役に立つことが、認証取得企業からの実体調査(JQA ISO9000ニュースNO9)であきらかになっている。98%が役に立つという結果である。このことが、1.1章で述べたように輸出に関係なく認証取得が行われている理由であろう。
1.3 品質システムのメリット
品質システムのメリットはどのようなものか。1.1章の認証取得目的に対して、1.2章での98%の割合で役に立つとの回答でもわかるように、品質システムの導入はメリットが大きいということができる。
その他、個別のメリットとしては、 ・競争上の優位性があがった ・顧客クレームの減少 ・危険が減った ・新しい市場を切り開くことができた ・出荷日数のミスが減った
・コストが低下した 等を挙げることができる。 責任の明確化については、今まで日本になかった文化であるため現場レベルにおいてはかなりのメリットを受けているところもあると考えることができる。
1.4 品質システムの問題点
今まで、品質システムのメリットばかり述べてきたが、問題点はないのだろうか。 施行当初からいわれていることであるが、ISO9000の要求事項が製造業を対象に記述されていることから、他の業種に適合しようとすると解釈が難しいという導入前の問題は、いまだに残っている思う。
では、導入後は、どうか。ペーパワークの増加が、問題点のトップに挙げられいる。
2.問題点分析
品質システムの問題点の上位を列挙し、実体を分析したい。 (JQA ISO9000ニュースNO9より) ・ペーパーワークが増えた ・規格の解釈に差がある(内部と外部、審査員と被監査者)
・言語や専門用語の理解力の問題 ・規定が多すぎる
2.1 ペーパーワークの増加
品質システムは、書類を増やすだけのシステムだともいわれるが、文書、契約、約束事を文書化する文化がない日本では、確かにすべてを文書に記述し、文書に証拠を残すということは大変な労力だと思う。しかし、このことにより、メリットも生まれてきていることも確かである。
では、問題点となっているペーパーワークの増加とは何だろうか。これは、文書管理の煩雑さである。 品質文書の文書管理をは次のようではないだろうか。
・品質マニュアル、規定、標準書を担当部署が記述する。 ・記述した文書の承認を受ける。 ・配布部署数の文書のコピーを行う。 ・配布部署毎、又は文書毎に配布台帳を作成する。それに合わせて社内メールに文書を配布する。
・旧文書を回収し、台帳に記入する。 これは、どこの企業でも行っていることであるが、知的なワークとはかけ離れている作業が多いために担当者は不満をペーパーワークの増加に訴えているのである。
2.2 規格の解釈に差がある(内部と外部、審査員と被監査者)
ISO9000の要求事項が製造業向けに記述されていることから、他の業種に当てはめた場合、解釈に差がでているように思う。また、審査、サーベイランス、定期審査と審査機関から品質システムを審査にくるわけであるが、審査員が同じとは限らない。このため、前の審査員と今回の審査員の言うことが異なるといったことが起きている。
審査後の審査員からの指摘については、被監査者が納得しないと本来は成立しないのであるが、審査員との間でトラブルになったということもあまり聞かない。被監査者という立場から納得いかないまでも従っているのであろう。
2.3 言語や専門用語の理解力の問題
この問題は、2つの問題を含んでいる。1つは、ISO9000の要求事項の理解の問題と、もう1つは、審査員との意志の疎通がうまくいかないための問題である。
2.4 規定が多すぎる
日本の企業は、頭の良い人が多くいるため、立派な品質マニュアル、多くの規定を作り過ぎることが多々ある。 外国の企業の品質マニュアルは、要求事項のままであったという話も聞いたことがある。(どこまで本当かは定かではない) また、コンサルタントにいわれるまま、規定をそろえていったら多くなってしまったという話も聞く。
認証取得するまでは、不安であるため、作らなくてもよいものまで作ってしまう傾向にあることはある程度しかたのないことである。
3.問題点の解決策
3.1 電子文書管理
ペーパーワークの増加は、ペーパーを使用しているから起こる問題である。ペーパーをなくすことによってこれらの問題の多くは解決される。つまり、ペーパーから電子媒体、すなわちコンピュータ管理に変えるのである。
電子文書管理の必要最低限な機能としては、誰もが適切な版を参照できるようなコンピュータ環境があればよい。 次に、配布管理、承認管理といったものがコンピュータ上でできればよい。
コンピュータネットワークが整備されている企業であれば、少しの工夫で電子文書管理が行えると思う。また、ISO9000対応の文書管理ツールも最近は販売されているので、それを採用する事も良い方法だと思う。
3.2 審査員教育
JABでは、審査員の均衡を計るために審査員に対して教育を行っている。審査員は、認証取得予定企業が多いことから、非常に忙しいことも事実であるが、企業の生命線ともいえるシステムを審査しているのであるから、絶えず、前向きに勉強を続けて欲しい。
JABに対して、被審査者への声が届くような仕組みを作っていくことも必要である。これには、被監査者が声を出し続けてくれることを期待したい。 また、認証を受けるために勉強をした貴方が審査員として登録してはいかがだろうか。
3.3 規定の見直し
認証取得したならば、次のサーベイランスまでに指摘事項を修正するのであるが、このとき、規定の見直しも行って欲しい。すべてではなく、徐々にでよいと思う。
そのころになると受審のコツも覚えて、ある程度の余裕がでてくると思う。楽をするためではない。無駄をなくすためにである。
3.4 業界毎の取り組み
認証取得を既に行っている企業は、業界のリーダー的企業であると思う。業界全体の発展のためにも、業界としての、要求事項の解説、用語の解説、及び審査機関も巻き込んで業界毎の指針、ガイドを作成してはどうだろうか。
日本土木工業協会では、このような取り組みを既に始めている。
4. 全体を通して
◎ISO9000シリーズ認証取得企業は、自社製品の品質向上をめざして活動を行っている。
◎ISO9000シリーズ認証取得活動を通して構築する品質システムは、自社製品の品質向上のために非常に有効である。
◎品質システムで問題となっているのは、ペーパーワークの増大と審査機関との意志の疎通である。
ISO9000シリーズの未取得企業は、
●積極的にISO9000シリーズの認証取得活動を行うべきである。
ISO9000シリーズの認証取得企業は、
●ペーパーワークの増加を抑えるため、電子文書管理を採用すべきである。
●また、業界全体の発展のため、未取得企業を支援しよう。
以上