Copyright マネジメント開発室 シニアコンサルタント 山室隆彦
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建設省が、ISO9000シリーズと同14000シリーズについて建設産業 界を対象に行ったアンケート結果によれば、ISO9000sは95年から96 年にかけて業界に急速に普及し、建設会社では全体の七六%にあたる企業が取得 済み、あるいは取得予定となっている。また、建設関連会社でも取得の動きが活 発化していて、建設コンサルタント各社は建設会社より少し遅れて動き出してい る状況である。ISO14000sについては認知は進んでいるものの、認証取 得予定の企業はまだ二割弱にとどまっている。 しかし今後、認証取得に向けて の活動が本格化するものと予想されている。関心度については、建設会社、建設 関連会社とも高い関心を示している。ただ「当面、9000sへの対応が中心。 社内体制はこれから」との声が強く、まずは9000sへの対応を優先するとい う意識の企業が多いのが現状である。
最近、大手ゼネコンを中心としてISO9000シリーズの認証取得が相次い でいる。また中堅・中小の建設会社でも同シリーズに対する関心は、入札制度等 への活用が本格化しているため、一気に広がってきている。 この一年間の大手ゼネコンでの認証取得の動きを見ると、これまでの本社・本 店の一部門から全国の支店単位での取得に向かっていることが明らかになってお り、ISO9000sの認証取得は、そう珍しいことではなくなってきている。 今後の焦点は、中堅・中小建設会社での認証取得の動向であろう。 最近の建設業におけるISO9000シリーズの認証取得の展開を見ていると 3つの大きな流れがあることが見て取れる。 第一には、公共工事の発注者である官庁、公社・公団、地方自治体などが工事 の入札基準としてISO9000sを取り入れようとする動きがますます明確に なってきていること。 第二には、すでに認証を取得した大手ゼネコンが協力会社へのISO9000s 認証取得を求め始めたこと。 第三には、それに伴なって地方の、そして中堅・中小の建設業者にも認証取得 の必要性が高まりつつあること。 これらの3つの流れは、相乗効果によって、建設業界全体にISO9000s の認証取得への気運を盛り上げつつある。
公共工事の発注者である、官庁、公社・公団、地方自治体がISO9000s を工事の入札基準や品質管理基準として採用する動きがますます明確になってき ている。 建設省では、ISO9000シリーズによる適用工事を96年度には、関東地 建の発注した4件と道路公団の発注した3件の計7件の工事を発注したが、97 年度には全国で新たに11件の工事を実施することに決めた。この11件の中に は一般競争入札を採用する大規模工事や設計コンサルティングも含まれる予定で、 実施機関も関東地建だけではなく全地方建設局に拡大する。 公共工事への国際規格の適用方法を検討するために建設省内に設けた「品質・ 環境・労働安全衛生等に関する国際規格の公共工事への適用に関する調査委員会」 ではISO9000sのパイロット事業について、対象物件や実施機関を拡大す る方針を打ち出しているため、今後件数と適用工事の範囲はますます拡大してい くだろう。 運輸省では97年度、3件の港湾工事においてISO9000sのパイロット 工事を実施する。 これらのパイロット工事においては、20ある要求事項のうち、とくに工事に 関係する「検査・試験」などの6項目に絞って重点的に審査するところが特徴的。 これらのパイロット工事は、いずれもAランク工事であり、公募型指名競争で入 札される予定。 これにより、発注者側の事前審査のあり方や監督のあり方などを検証するとと もに、港湾工事における適切な品質システムを検討していく。 農林水産省はISO9000シリーズ初適用となるモデル工事を97年度に発 注する方針を省内の「農業農村整備事業工事の品質確保研究会」にはかり、決定 した。 ISO適用のメリットや課題をあげるとともに、省内にある監理基準の実効性 や有効性を再確認する。ISO9000sのモデル工事は揚・排水機場などの一 般的な農業土木工事が対象。公募型指名競争入札の範囲内の工事から選定し、I SO9002の規格に沿った品質システムを適用する。工事発注は各地方農政局 で行われるため、モデル工事のための全省的な統一マニュアルを作成した。その 方針に従い、関東農政局で1件、北陸農政局で1件のISO試行工事が公示され た。 東京都財務局は、都立大崎高校改築工事(その九)を第一号モデル現場に設定 し、公共施設の建築工事にISO9000シリーズを試験導入した。 都財務局では今後、議会承認を必要としない九億円未満の中規模工事、中小建 設業者を対象にした小規模工事への試験導入の可能性も検討していく方針である。 また、東京都は、下水道施設の建設工事にISO9000シリーズを試験導入す る方針を決めた。平成9年度にはモデル工事2件を発注する。対象は、幹線管渠 建設工事と処理場建設工事それぞれ1件とし、WTO対象とする。 東京都が公共施設の建築工事に、ISO9000sの試行を決め、具体的なモ デル現場を設定したことから、他の地方自治体でも同シリーズの試験導入に向け た検討が本格化している。
これまでに見てきた発注者側の取り組みとは別に、ISO9000sを先行し て取得したゼネコンが、つぎに示すとおり自社の協力会社の管理のために積極的 に利用しようとする動きも目立ってきた。 前田建設は、ISO9000sの認証取得を希望する協力会社に対し積極的な 支援策を講じている。協力会社組織である前友会を通じて具体的なニーズを把握 した上で、講習会の開催や新たな研修制度の創設などを通じて、認証取得までの 支援を実施していく方針。 ただし、前田建設は支援とともに競争が厳しい状況下で、コストと品質で勝負 できない協力会社には「仕事を辞退願う」との厳しい方針を打ち出しており、協 力会社に対し品質に対する考え方の見直しを迫っている。 また戸田建設は、ISO9000sの認証取得に伴い、協力会社評価制度の対 象企業の拡大を進めている。従来、とび・土工・鉄筋の手間三職と機械土工など 専門工事業者を評価対象としていたが、これを資材メーカーや測量会社、警備会 社などにも拡大。直接施工に関係しない会社についても範囲を広げ、品質や安全、 モラールなどの向上を図る。 すでにこの評価制度を導入している東京支店では、品質、コスト、安全、モラ ールなど施工品質全体の向上が図られたほか、能力に応じた平準的な発注が可能 になったとしている。
ISO9000sを積極的に公共工事に取り入れようとする地方自治体を含む 発注者側の動きと、協力会社管理に利用しようとする大手ゼネコンの動きを受け て、地方や中堅・中小の建設会社のISO9000sに対する関心が高まってい る。 建設業界へのISO9000sの展開がもう少しゆっくりしたペースで進むだ ろうと考えていたところが多かったためか、各社とも対応にあわてているのが現 状である。 そのため、各地で建設業団体の開くISO講習会は盛況で、コンスタントに2 00人から300人の参加者が集まっている。
中堅・中小の建設業者を含めた、建設業界全体でのISO9000s認証取得 へのうごきが盛り上がりを見せるなかで、今後最大の問題となってくるのは審査 登録機関の整備の遅れであろう。多くの企業が「審査に時間がかかる」という指 摘をしており、建設分野に詳しい審査登録機関の整備や審査員の研修体制の充実 が急務である。このままでは、審査登録機関の整備問題が、ISOの公共工事導 入の最大のネックになりかねない。
ISO14000sについては認知は進んでいるものの、ISO9000sに
比べればまだまだの感が強い。 しかし今後、認証取得に向けての活動が本格化
するものと予想されている。
発注者側に関していえば、ISO9000sの場合と異なり、中央官庁よりも
地方自治体での動きの方が先行している。
東京都が7月にまとめた循環型社会づくりに関する調査結果によれば、都が発
注する公共事業から発生する建設廃棄物の再生利用、清掃局と環境保全局へのI
SO14000sの導入の必要性を強調している。また水道事業に関してはIS
O14000シリーズ(環境ISO)を導入する方向ですでに検討をスタートさ
せている。いずれも公共工事の発注とは直接に結びつかないがいずれ影響が及ぶ
ことが予想される。
大手ゼネコンの中では先行して、竹中工務店および大林組がISO14000s
の認証取得に向けて社内組織を整備し、本格的な活動に入っている。
中小建設業者については、具体的な活動に入っているところは皆無だが、東京
都の環境科学研が5月に行なった調査によれば、都内中小建設業者の約一割がI
SO14000シリーズ(環境ISO)の認証取得に照準を合わせていることが
明らかになった。
生き残り戦略の一環として、取得を考えている中小建設業者が目立つ。親企業
や取り引き先からの要請、業界団体からの指導で取得をめざすケースもあり、中
小建設業者にも環境ISO取得の機運が高まりつつあるようだ。
以上