「環境経営」に国際規格導入

 Copyright マネジメント開発室 主任研究員 村上 治

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 @環境マネジメント国際規格、国際標準化機構(ISO)14000の導入が広まりつつあるが、その背
  景には公害対策から地球環境保護へという社会の認識の変化がある。
 A企業にとって、環境問題はリスクマネジメントやマーケティングの問題として、より現実味を
  帯びた問題になりつつある。
 B環境マネジスントシステムは経営システムと表裏一体であるため、導入にあたっては、ISO9000
  などの他のシステムとの統合を前提に考えるべきである。

導入の背景に構造的な要因


 大企業を中心に、環境マネジメント国際規格ISO14000を導入する動きが急速に広まりつつある。
ISOI4001を含む複数の規格から成る環境マネジメント規格ISO14000は、ISO9000には興味を示さな
かった流通業・サービス業も導入を検討しており、ISO9000以上に広い業種で導入が進むと予想される。
 ISO14000は規格とはいっても、産業排出物、廃棄物規制のようなものではなく、企業のマネジメン
トを環境保護の観点から規定したものである。このような環境マネジメントの考え方が生まれてき
た背景には、環境問題の構造的変化がある。
 我が国でも高度経済成長期から公害問題が社会的にクローズアップされ、国際的にみても厳しい
基準による規制が実施されてきた。しかし、公害は地域限定的な問題であり、因果関係も比較的特
定しやすい問題であった。
 ところが八〇年代に入って深刻化した地球温暖化、酸性雨、オゾン層破壊、森林資僚の枯渇、海
洋汚染などの地球環境問題は、それ以前の公害問題とはかなり異なった特質がある。
 第一に、特定の有青物質に起因する問題ではなく、企業などの組織や個人の日々の通常の活動に
よる環境負荷に起因する問題であるという点である。
 第二に、影響が及ぶ大気や海洋などは地球全体の共通資源であるため、対策には国際協調が必要
であるという点である。
 したがって、対策も従来のパイプエンド方式と言われる公害対策の体系とは大きく異なり、社会
や企業や個人の活動全体を捉(とら)え、その活動の仕組みについても対策を打つ必要がある。
 環境問題はまだ原因が照明されていない部分も多い。このような場合、単に現在、法的規制対象
になっている環境影響要因のみに対処するのではあまり意味がない。様々な観点から環境影響要因
を把握し、体系立てられた管理下に置くことが重要である。
 全体の管理システムが横築されていれは、現在解明されていない環境影響要因が新たに発見され
ても、システムに管理要素を組み込めはよい。発展途上国や中小企業に先進国や大企業と同等の管
理水準を要求すべきかというような問題もある。したがって、個別の事象への対処ではなく、シス
テムで管理する方が適切だ。

消費者行動も資源循環型に


 これまで企業にとって、環境にかかわる活動が付随的業務であったことは否めない。
 しかし近年、環境における企業の社会的責任という問題が、建前上の「きれいごと」として片付
けられない状況になっている。米国では総合環境対策保証責任法(通称スーパーファンド法)に基
づいて、汚染された土壌の浄化が土地の所有者や汚染者に義務付けられ、浄化のための膨大な費用
が発生するケースが出ている。
 そのため、米国では環境監査は会計監査同様、重要な位置づけになっている。不動産売買やM&A
(企業の合併・買収)の際、投資や融資を行う金融機関や損害保険の査定を行う保険会社にとって、
企業の環境マネジメントがどのような状況であるのかが重要な関心事となっている。今後、我が国
の企業も、このリスクをいかに予防するかが経営上の大きな課題となってくる。
 消費者の意識も変化しつつあり、環境にやさしい商品を選択するようになってきている。l
 欧州では、環境保護意識が市民に浸透しており、価格が高くても環境によい製品を買うという消
費行動が定着している。欧州社会自体が資源消費型社会から資源循環型になっており、社会システ
ムに適応しない商品は自然淘汰(とうた)されていく。
 最近のアウトドアブームで、使用済みPETボトルを再利用したフリース素材のアウトドア衣料が
人気を得ている。我が国でも、環境影響を配慮した商品を使用することは進んだライフスタイルで
ある、という価値観が生まれつつあるとも言えよう。
 企業の環境に対する影響の利害関係者は政府、地方自治体、金融機関、保険会社、投資家、経営
者、従業員、地域住民、消費者や消費者団体、環境保護団体など数多い。欧米では、企業が環境影
響や環境に関する活動などの情報を利害関係者に公開し、積極的にPRをしている。
 環境問題は、リスクマネジメントとマーケティングという二つの経営課題にかかわる大きなファ
クターとなっている

閉鎖性を脱し共通の土俵に


 ここ数年、製造業を中心とした多くの企業が、ISOによる品質マネジメント国際規格ISO9000を導
入している。ISO9000は、輸出企業が海外顧客から認証取得を要求されたのをきっかけに広まり、
日本国内での企業取引において必須(ひっす)な「パスポート」として定着してきている。最近で
は、国内の公共工事入札基準に使用される動きがあり、建設業界でも普及の兆しがみられる。
 ISO14000についてもISO9000と同様、海外顧客からの認証取得要求をはじめとして、企業への大
きな影響が予測されている。今後、ISO規格として、労働安全・衛生に関する規格も制定される見
込みである。企業会計においても、国際会計基準(IAS)導入の動きが進んでいる。
 大企業だけでなく中小企業も調達、生産、販売などの企業活動を国境を超えてボーダーレスに行
うのが当たり前になった現在、国内外を問わず、企業活動を国際標準ルールに沿って行う必要に迫
られている。
 高度経済成長期に成功を収めた日茶酌経営システムはほころびつつある。今や日本の常識は世界
の非常識であり、日本の特殊性を生かした閉鎖約システムは競争上、デメリットとなる。グローバ
ル化時代には、企業は世界共通の土俵で国際常識の通じる経営、すなわち「国際標準経営」の仕組
み作りをしなけれはならない。
 ISO14000導入は決して一過性のブームではない。時代の転換期における新しい経営ンステム構築
作業の一環であり、導入企業は今後ますます増えるであろう。
 しかし、環境マネジメントシステムを導入する企業の多くは大切なことを一つ忘れている。それ
は、既に多くの企業で導入済みのISO9000とのシステム統合である。多くの企業は、認証を取得する
ことにだけ関心を集中し、ISO14000やISO9000がマネジメントシステムであるという基本的なことを
軽視している。
 かつて情報システムをほとんどの企業が無計画に導入し、後になってそれらのシステムの統合に
苦労したことを、経営者は思い起こさなくてはならない。当時も人事、経理、購買、受注出荷、生
産管理といった個別業務の省力化を目的とし、システムの統合が必要となる日が来ようとは夢にも
思わず企業は個別バラバラにシステム導入を進めた。
 企業のマネジメントシステムは本来、一つである。これは環境のための活動、これは品質のため
の活動などと分けられるものではない。リエンジニアリングの対象となるビジネスシステムも本来、
同じものである。
 しかし、多くの企業では現在、それぞれのシステム検討は別の部署で別のプロジェクトとして行
われている。この無駄、そして将来もたらされるデメリットに経営者は早く気付くべきである。問
題が顕在化した時はすでに遅い。