95年からISOの文書を電子管理する情報システムの開発に関わり、この6年間でおおよそ1000社の企業・団体の方々とお会いしてきました。すべてが建設業ではありませんが、数多くの建設(建設コンサル)会社が含まれています。今回は、情報システムの面からISO9000/14000の文書管理について紹介してみます。
建設業は他の業種と違うか?
よく建設業は他の業界と異なっている、特殊である、と聞きます。情報システムの面では大きな違いは無いように思えますが、以下の点は考慮する必要があります。中小建設業に合ったサンプル文書(雛形)など参考になるものが少ない。作成していなかった文書も作成するので書類の作成や管理作業が大変になってる。作業所に対して文書をどう配付し、維持していけばよいか。ゼネコンなど大企業では、ISO9000は土木と建築で別々に取得したがISO14000は一緒に取得したので、文書の整合性と相互参照をいかに実現するか。ということがあります。特に、作業所という形態は会社の大小に関わらず共通する悩みのようです。
どのように電子管理するか?
最初に少しおさらいしておきましょう。通常の書類と比較して考えたとき、ISOでは文書とは仕事をする上での決まり(ルール)や手順(フロー)を記述した書類を指し、記録とは(文書に従って)仕事をした結果を記入した書類を指しています。また、記入する前の帳票用紙は文書の扱いですが、記入されたものは記録となります。両者は性質が異なるので、求められる管理方法にも違いがあります。この違いはISO担当者にとっては常識ですが、SEやシステム担当者は違いを認識していませんので、十分に理解を求める必要があります。
管理方法において求められているのは紙での電子でも基本的な違いはありませんが、電子の場合はネットワークを利用して文書をサーバコンピュータなど1カ所にまとめて共有利用することが前提になります。まず文書を作成したら承認の依頼をします。依頼は電子メールに文書を添付する方法もありますが、紛失や進捗がわからなくなる恐れがあるので、依頼事項のみ通知し文書は移動させない方が安全です。承認処理は、はんこやサインでなく承認者自身のパスワードなどを用います。印鑑ソフトもありますが結局は印影だけのものになりますので、要は、ちゃんと承認者が内容を見て確かにその人が承認したという裏付けが取れる仕組みであれば問題ありません。承認が済んだらその文書を利用者へ公開します。ここで大切なのは公開する迄は利用者から閲覧できないようにすることです。公開された文書はネットワークを経由して、誰もが同じ文書を閲覧できるようにします。建設業の場合、作業所までネットワークは引かれていないので、公衆回線やインターネットを利用してサーバコンピュータへ接続する方法があります。現状ではセキュリティやインターネットプロバイダーとの契約、接続拠点の関係から公衆回線で接続する方が多いです。配付はその言葉の意味とは異なり実際に文書を配らない(送信しない)方が簡単です。配ってしまうと、(電子文書であっても)どこに配ったかを管理する必要性がでてくるので「新しい文書が発行されました」という案内を通知します。案内の通知は、電子メールを使う方法や掲示板に掲載する方法でもよいでしょう。受領対象者は、(承認と同じように)パスワードなどで受領処理をしますが、常にネットワークを経由してサーバコンピュータの文書を閲覧するという運用方法により受領処理を省略している会社もあります。このあたりは少し驚くかもしれませんが、同じ文書をネットワークを使い全員で共有しているので配付受領する必要性がない、という考え方に基づいています。特に、配付と受領に関しては紙で管理するより電子で管理する方が圧倒的に時間とコストに優れています。
問題点としては、モニターで閲覧するのでなく紙に出力してしまうというのがあります。この場合、印刷した紙の位置づけが大事です。紙に出力したものは全て参考扱いにしてしまう、または期限を決めてその間に限り有効にする方法があります。出力するのであれば紙の使用量は減らないのではという心配もありますが、例えば電子メールをすべて印刷してからでないと読まない人でも無い限り、何でも出力することはないでしょう。また印刷を禁止してしまうと、記録の帳票用紙などが作業所で使えないなど紙の方が良い状況もあるので、行きすぎると融通性に乏しくなります。
問題点とは別に要望として多いのが、文書の検索とスキャナーによる紙文書の取り込みがあります。検索には、キーワードによる検索と全文検索があります。文書数にもよりますがISOに限って言えば全文検索までは必要ないようです。インターネットで不特定多数の情報を検索するような時は全文検索が便利ですが(それでもやたらと不要な情報まで表示してしまいかえって見つけるのに苦労することもあります)、キーワード検索の方が簡単に見つけられます。ただしキーワードはあらかじめ準備しておいてあげる必要はあります。このキーワード検索を発展させて関係のある文書のみ表示させるようにすれば、ISO9000に利用する文書、ISO14000に利用する文書と表示を切り替えるのに有効な方法にもなります。次に図面などの外部文書を紙で受け取ったものを取り込むことは、スキャナー装置とイメージソフトがあれば電子データに変換できます。しかし、モニターでの閲覧に適していないものや、変換に手間がかかるようなものは、その入手先や保管場所を記したものを(電子)文書としておく方が、簡単で楽なやり方です。
最後に、電子管理で成功している多くの会社は、何をどこまで電子化するか見極めて楽な運用ルールで活用されています。これからも次々と新しい情報技術がでてきますが、いきなり100%を求めずに、できるところから、できる範囲で、そしてできるだけ楽な運用ルールを検討していただきたいと考えます。